「ろくろ首」を含む小泉八雲の手書き原稿(草稿)をデジタル化公開

富山大学附属図書館では、『怪談』の中でも特に有名な「ろくろ首」を含む小泉八雲の貴重な手書き原稿(草稿)をデジタル化公開しました。
本資料は本学が保有する小泉八雲の蔵書(ヘルン文庫)に含まれていたものではなく、当館が八雲に関連する研究資料を収集する過程で入手したものですが、小泉八雲の創作の過程を垣間見ることのできるとても興味深い内容の資料です。

本資料は封筒1枚及び鳥の子紙による原稿10枚からなります。
複数の作品の草稿と思われる手書き原稿が含まれており、なかなか複雑で興味深い構成になっています。

封筒には、"(Semi.) Illustrations."とあり、八雲のエッセイ「蝉」(『影』 所収)に掲載された蝉の挿画の名前が記載されています。また、人差し指で"Illustrations."の文字を指さしている絵も描かれています。
しかしながら、封筒と中味(本体)とは別物です。

本体の構成は次のようになっています。
  • 1枚目から3枚目の表書きは「ろくろ首」の手書き原稿の断片です。1枚目に"The Story of Kwairyo"と表題が記載されていますが、"Kwairyo"とは「ろくろ首」の主人公である「回龍」のことです。印刷刊行されたものとは一部字句が異なっていますので、草稿と思われます。
  • 4枚目から6枚目は、夢を食べる動物とされる獏のことを書いた断片ですが、『骨董』に所収の「夢を食うもの」とは異なっています。
  • 7枚目から10枚目は、特定の著作に対応するものではありませんが、「禅の公案」(『異国情緒と回顧』所収)と関係のある記述や、「御束帯」「冠」「下重ね」などの日本語に英語で説明した鉛筆書きが見られます。
  • 1枚目から3枚目には裏書きがあります。1枚目の裏書きは「おしどり」(『怪談』所収)の冒頭部分、2枚目の裏書きは「蝶」(『怪談』所収)の草稿の一部分と思われます。
  • 7枚目から10枚目にも裏書きがあります。
以上、簡単に紹介しましたが、内容が不明の部分もありますので、識者の方にご教示いただければ幸いに存じます。
詳細な内容記述を含む書誌データと本文のPDFデータが富山大学学術情報リポジトリToRepoに登載されています。次からご覧ください。